前回のMAKINO LETTERでお話した、人形美術家の「師匠」のお宅訪問のスナップです。
師匠の名前は「谷ひろし」
人形劇団京芸の代表者であり、日本の人形劇人の重鎮でもあり、関西の舞台美術家としても色々な方面の方々とお仕事をされています。
大正15年生まれで、もう80歳も過ぎましたが現役で本当にお元気です。谷さんとは、私が学生の時、京芸の研究所に入所してからの30年以上のお付き合いです。
人形美術に興味があり研究所を卒業後も、大学中は新作や谷さんの舞台プランの大道具製作のアルバイトでお世話になりました。
昔気質で職人気質の谷さんは、人形作りを全て手取り足取り教えて頂ける方ではありませんでしたが、横で仕事振りを見て、盗みながら色々な事を覚えました。
技術的なことは無論の事、美術観、舞台観、さらには人生観にも大きな影響を受けた事は間違いありません。
当時は多くをしゃべられる方ではなく、仕事を横で拝見していて、ポロリ、ポロリとお話いただくその話が本当に今の大切な宝物になっています。
最近では随分フランクにお話して頂ける様になりましたが、お出逢いした当時を振り返って「いつも仕事場の横で、黙ってじっとワシの仕事を見ているもんやから、気持ち悪くなって、この木で、(人形の)かしら、彫ってみるか?」と言われたそうで・・・。
そんな事は当時知る由もない私は、感謝感激、天にも昇る想いでやらせて頂いた訳です。
谷さんの仕事は、妥協がありません。追い詰められても最後まで諦めるということがありません。美術の仕事は、毎日毎日の仕事の積み重ねの結果やから手抜きは出来ん、というのが自論です。
上の写真でもお解りの通り、谷さんの作る人形達は、愛らしい顔と表情をしています。
苦しい事も笑い飛ばし、明るく元気に生き抜こうとする生命力に溢れています。
自分の父親以上に年上の「師匠」が、今年も元気にご活躍される事を、そしていつまでも尊敬する大胆な仕事を我々に見せて、度肝を抜き続けて欲しいと願っています。
谷さんの顔を拝見すると、いつもホッコリとしたあったかい気持ちになります。
何時までも一緒に話していたいと思います。
この日は、私が車のため、酒のお供ができず、それが一番不満の様子でした。
奥さんに叱られながら、いつもよりたくさんのお酒を美味しそうに召し上がって、上機嫌でした。
谷さんに巡り会えたことは、私の何よりの宝物のひとつです。
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